修繕

え~、毎度ばかばかしいお笑いを一席。

とある建築会社い一本の修繕依頼がまいこみます。

営業マンは指示された家につきチャイムを押しますと

「ピンポーン」

「はーい」

中から聞こえてきたのは、うら若い女性の声。

営業マンはネクタイに手をやります。

「はいはい。お待たせしました。」

と、でてきたのは声とは全くそぐわない大柄な女性、というよりロン毛の男性、

営業マンはあっけにとられていると

「さぁどうぞ」と中に通されます

リビングはピンク一色に染められたメルヘンな世界。

営業マン、気を取り直し、本題に

「今日はどちらかを修繕されたいとのことで、一体どちらを。」

部屋を見渡す。

「やーねー。困ってたのよ」

「?そうでしょうね。ですから私が呼ばれたわけで。ところでどこが?」

「やーね。見たでしょ。」

「いえ、まだ拝見しておりません。どちらが?」

「あら、やーねー、見なかったの?」

「はい、だからどちらが…」

営業マンが言い終わる前に

「だから屋根や言うとるやろ!!」

その声は長年営業マンがきいたどんな大工さんよりも

一番ドスのきいた声でございました。

 

床の間

え~、毎度ばかばかしいお笑いを一席。

ある時、近所の町内会長さんのお宅で

花見をすることになりました。

気軽な客席です、お誘い合せのほどを、

会長さん、町内のものに声をかけます

集まった人たちはただ酒に気を良くして

会長さんのご機嫌をとろうと、

お宅を誉めちぎります。

「いやー、やっぱり会長さんのお家にもなると格式を感じますな」

「なにをおっしゃる。みなさんの家とかわりがありますかいな」

「いえいえ、うちなんかは歩けばみしみし音はする、雨漏りでふろが沸かせる始末ですわ」

こんな調子で皆が褒めるもんですから会長さんすっかり気を良くして家の自慢を始めます。

「あの欄間は名のある彫り師に作ってもらいましたんや」

最初は聞いていた皆の衆もだんだんにしらけてまいります。

「あの床の間に飾ってある、花瓶ですがな、あれはたいそう有名な一の焼いた、

もう二度とは出回らん品物ですわ」

しらけ鳥に気づかず続ける会長さん

すると、一人の男が

「きょうび、床の間のある家のほうがその花瓶より珍しいんちゃいます」

悦に入っていた会長さん急に興の冷めた様子で

「これやから困りますねや、趣のわからんお方は、

床の間のないような家はビジネスホテルと同じ。

つまり、食うて寝るだけの味気のないもんいうことですわ」

会長さん床の間の大切さをこんこんと語ります。

家に帰ってもおもしろくない男は今日あったことを嫁さんにはなします。

「なんやねん、床の間、床の間って家が十分広かったら

だれでも作ってるわい、あんな偉そうに上からモノ言わんでも」

「あんた、しゃーないやないの」

「何がしゃーないねん、あー悔し。」

 

奥さん

え~、毎度ばかばかしいお笑いを一席。

「おい、今日はここの奥さん来ねえのか?」

大工の若頭が新入りに天井を貼りながら聞いております。

「へぇ、今日は見てませんね、奥さん。」

「なんでぇ、今日も奥さんの色っぺぇお尻を拝めると思って勇んできたのによぉ~」

「確かに、あの奥さんお茶なんか入れてお盆で持ってくる後ろ姿なんか

これぞ柳腰って感じですもんね。」

「そうよ、お前も若けーのに分かってやがんな。

うちのカカアも昔はあの奥さんにひけはとらなかったのが、

今じゃ柳じゃなくてありゃ松だ」

夕方になって大工の棟梁がやって来ます

一つ一つ丁寧に仕事の確認をしてまいります。

「おい、今日の進み具合はどおでぇ?」

若頭ははしごからおりて答えます

「今日は奥さんがいらっしゃらなかったのでなんだか仕事に張りがなかったですぜ。」

「ばかなこと言ってんじゃないよ、ほれどれ位進んだか見せてみやがれ」

 はしごにひょいと飛び乗ると棟梁、天井をくまなく確認します。

「おいおい、どうなってんでぇ!この柱と柱を繋ぐ梁がねぇじゃねぇか!」

言われた若頭、驚いて天井を見上げます

「ばかやろう、ちんたら仕事しやがって。」

「すんません、でもここの奥さんにも責任がありますぜ」

「何をバカなこと言ってやがんだ」

「だって奥さんが来ない日は

梁(張り)がない」

大工

 え~、毎度ばかばかしいお笑いを一席。

年も迫った大晦日の晩、ある大工のもとに一本の電話がかかってきます。

「もしもし、今日はなんぼなんでも仕事はできまへんで」

受話器をとるやいなや早口でまくし電話をきろうとする大工

「待ってください、そこをなんとか頼んます」

切羽つまった相手の様子に切るに切れなくなった大工はハナシだけでも聞くことに。

「私はあるオーケストラの指揮する者です。

それが困った事に今晩演奏する会場が漏るんですわ、雨がポタポタと…」

大工はカーテンを開くと気付かなかったが確かに天が降り出していた。

「今時分に雨とは確かに珍しい、せやけど、

今日はなんぼなんでも堪忍しとくんなはれ。せやバケツでもおいて

今日のとこはしのぎはったら」

「そんな訳には行きません。楽器はデリケートな代物です、水でもかかったらパーになります。」

「そない言うても、わし今から紅白観なあかんねや、今時は小林幸子が復活しよるいうてるし」

「紅白も大事ですがオーケストラも大事なんです。」

「いやいやそれはちゃう。年末は日本人なら紅白観なハナシにならんわ」

「そこをなんとかお願いします。

あなたでないと、いやあなたしかいないんです。」

「なんでうちやねん、雨漏りくらいなおせる業者はよそになんぼでもあるやろ」

「いいえ、あなたでないと

年末は大工(第九)が必要」